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[小説]巨竜城塞のアイノ

鳥居 羊・著
都森 すみと・画
HJ文庫・刊


地球の中世に酷似した異世界
地中海を席巻した大ローマ帝国が分裂の末、イスラム勢力に制圧されたような時代
バルカン半島に位置する国はこの世界における十字教的存在「聖十三天使」を奉る西方国家にとって、異教に対する最前線となっていた
旧帝国時代の遺産のみを頼りとする西方国家に対して、異教の大国は失われた帝国の遺産を上回る技術を自身の手により作り上げていた

幾つかの点を除けば、まんま地球と同じ歴史を歩む異世界

違いは失われたとは言え、少なからず残る遺産、魔法
新たに作り出すことは出来なくとも、確固として存在する巨大な生体城塞

国としての威容は生体城塞の行動範囲であり、その保有数によって決まってくる

主人公、賀藤 潤が渡ってきたのはそんな世界だった
縫製工場の跡取で、人より多少数学や物理が得意な高校生が、こんな世界で生きていくことは非常に困難なはず

一般的なラノベだと世界が違おうが国家や人種が違おうがご都合主義的に意思疎通ができる設定が多い中、本作では言語の差異を題材として扱っている点は評価したい

異世界に渡る契機となった事故の際、潤は人外の存在「天使核」と名乗る者により、望みを一つ叶えてもらっている
普通なら「不老不死」やら「超能力」やらが選択肢に出てくるところ、潤は異世界において最初に必要とし、生き抜く為に必要なものとして「言語に不自由しない」ことを望んだ

結果、異世界においてもあらゆる言語、文字を初見から理解し、自分が話す言葉も伝わる能力を得る
本編中、この力について触れられている部分を見ると、人間に宿る「人核」の上に超常的な「天使核」の力が載っており、言語の入出力時にここで変換されているということらしい

意志の疎通はできても文化風習の違いにより翻弄されながらも、この世界の異質さに対して文化的改革を決意する潤
巨大兵器やら魔法やらが存在しながらも、石鹸で手を洗うことも下着を身に着けることもなく、権力者は買い物から着替えまで自分でしないのはおかしい!、と

周辺国の策動により次第に異教の大国との開戦へと状況が変化する中、潤は数学、物理の知識を用いて奔走することになる




「下着が発明されたのは18世紀」・・・どれどれ

18世紀に入ると、プランテーションによる綿花の増産、自動機織機の開発、綿繰り機械の発明により、安価な綿布製品を大量生産することができるようになる。家で手工業として作られたものではなく、工場で大量生産された下着を店で買うということができるようになったのはこの時代である
        ...wikipedia「下着の歴史」より

これ以前だとタイツ、半ズボン、コッドピース(所謂チンガード)
現代人の感覚だと半ズボンやタイツの下に別途パンツを着用するところ、地肌直タイツ、ズボンだった訳だ
中世ファンタジー物で出てくるレギンズやらトーガやらの下は、基本マッパ!

家にある新紀元社の中世古代の衣装本でも確かに下着については同じような記述だった

客寄せ用として帯やら何やらでやたらと「パンツ」連呼されているのはこれが原因か
まぁ、主人公の実家が老舗の縫製工場(基本下着)となっているし、潤の文化改革動機に下着無し文化があるのも分かるが

ただ、下着無しとなるのはズボン系の場合が基本なんじゃね?
スカート系でも下着無しってのは、余程の気候じゃないとありえない気がする
砂漠気候なら肌を晒しすぎるのは(特に白人系には)自殺行為だし、熱帯雨林なら衛生面からも最低限褌的何かを巻いているのが普通では?

生体城塞については、いくら巨大だと言っても四足歩行タイプでは揺れの面からありえないだろう
似たような移動城塞物だと「鋼殻のレギオス(富士見書房)」もあったが、あれは無限軌道だか多輪だかで、少なくとも四足歩行ではない
規模ももっと大きい
ましてや上に城塞構造物を載せたまま生物が格闘戦を繰り広げるのは噴飯物
文中に出てくる生体城塞ではブリテン(的位置の国)の飛行火竜タイプの方が現実味ある

一番残念だったのは後半
潤とともに事故現場にいた残り二人と思しき人物の登場描写
「言語に不自由しない能力」を選んだ潤が特別で、他の二人は出ても別の境遇になっているもんだと思ったら

なんか普通に異世界人と意思疎通してるぽいし!

どうなってんだよ、一体

と思った


色々込みで「異世界行っちゃった系ラノベ」としては、まぁまぁかな
文体や文章はいいと思います、はい

読み終わったら久々に算盤はじきたくなったw

  by varelire2 | 2011-07-18 12:02 | | Comments(0)

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