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ベン・トー R 唐揚げ弁当380円

20:44
終着駅に到着した地下鉄が、若草色の車体から疲れきったサラリーマンやOLの群れをホームに吐き出す
まるで合わせた様な暗色形の衣服に身を包んだ彼らは、終始同じペースを守ったまま改札を潜り抜けていく

駅に隣接するバスプールを利用するものは構内の電光発着板に目をやり、ある者は舌打ちし、ある者はホッと息をつきながら三々五々散っていく
どこの町でも見られるありふれた光景

そんな中、一部の集団が若干ペースを上げながら足早に向かっていく建物がある
あくまで走らずに、徒歩である
焦っている訳ではない、自分はバス到着までの時間潰しに向かうのだ、と
誰に向けるでもなく、無言で主張するように

SELVA

古くから政令指定都市のベットタウンとして名を馳せる、地下鉄終着駅に隣接したテナントビルである
国内有数の大型スーパー「ヨーカドー」に隣接という立地条件は、誕生時からある意味呪われているとも言える
独自のブランドを持つでもなく、その収益を全て入居する専門店のテナント料で賄っていると思われるこの建物の一階は、生鮮食品、精肉、魚介を扱う一般的なスーパーライクな店、健康志向を刺激する自然食専門店、輸入食材とコーヒーを主力とするインポート系、子供から大人まで幅広し支持層を持つドーナツチェーン、高齢者に人気の漬物専門店、OL層を狙った洋風惣菜店にスイーツな店と、実に多岐に渡る食料品店がひしめき合っている

フロア自体はさして広くも無い中、最も激戦区となる一角が存在する
上下エスカレーターを中心とした中央区画
そう、弁当エリアである

21:00を閉店時間とするSELVAにおいて、20:44着の地下鉄は最終半額時間帯(ハーフプライスラベリングタイム)となる

一般的なスーパーでは閉店30分~1時間程度が目安とされるが、SELVAの場合、夜間の主とした利用者は地下鉄客となるため、曜日、天候、イベント(最寄のサッカースタジアムの動向にかなりの影響を受ける)により在庫が大きく変化する

何も無い平日であれば、近隣の飲食店や居酒屋に繰り出す者、さっさと帰宅して自宅ご飯にありつく者も多く、店側はギリギリまで値下げを待つしのぎ合いを行う

それらを加味した上でも、ほぼ確実な値下げを期待できるのがこの時間なのである

僅かなスペースに軒を連ねる店舗
コロッケを主力とした惣菜系の店、焼き物をおかずにあしらえた弁当を主力とする店、地元の食材を使ってますというアピールのような創作弁当系の店、おこわ等の和風弁当を扱う店など、色とりどりの食材が仕事帰りの彼らの胃袋を刺激する
中でも二強と呼ばれるのが、焼き鳥を中心とする店と寿司屋である

焼き鳥はメインの串物こそ値下げは無いが、副業の唐揚げやイカ揚げをあしらった弁当や惣菜が対象となり、寿司屋は本来高めの握り寿司4貫~10貫のパックが最大で半額という猛威を振るう
(尚、寿司屋はもう一軒、更に高めの店があるが、彼らにとっては半額でもあまり意味が無い値段である)

SELVAでの戦いは時間との勝負だ
どこぞのスーパーのように派手な取り合いなどしようものなら、例え望みの弁当を勝ち取っても帰りのバスに乗り損なってしまう

戦いはスマートに、かつ迅速に行われる
人波に乗り、一度の通過で各店舗の在庫状況、値下げ具合を確認
その上で直感に来るものがあれば即座に手に取り会計を済ませる

全ての店舗を確認した上で戻った時にはもう無い事も多いのだ

店にとってもこの一群は最後の砦
売り逃せば廃棄するしかない惣菜、弁当にとっては、如何に他店より魅力ある商品、価格であるかをアピールせねばならない
それもあくまでスマートに

自分達と同じフロアには廃棄ダメージが薄い、おしゃれなスイーツショップも並ぶのだ
そちらの客の不興を買えば最悪店舗撤退の憂き目にも会いかねない

ある中年女性が半額となった8貫詰めの寿司パックを手に取る
イクラ、鰻を含み半額で295円
長年培われた脳内の損得勘定機構が、帰宅してからとるあり合わせの食事との計算結果を瞬時にはじき出したのだろう
釣られるように別のカップルがイクラ4貫パック、サーモン4貫パックを掴み取る
2パック合わせても400円以下である
既にどこかで食事を終え、帰ってからの酒の肴に丁度良いと判断したのだろうか

振り返るとコートを着たサラリーマン風の男が、地元風な名前をした割と新参の店で幾つかの弁当の支払いをしていた
軽く見ても3つはパックを掴んでいるが・・・なんと会計は1000円以下!

確かアノ店は今日値下げ札を出していなかったはずだが?
男は人波を乱さぬよう、穏やかに逆の流れに乗り改めて見てみるが、やはり札は無い

ダメ元で最も無難な唐揚げ弁当を手に取る
値段は380円

最近増えてきた格安弁当の類であろう
白米にユカリを塗したものが半分のスペースをふさぎ、3、4つの唐揚げにマカロニ風のサラダが付けあわせとなっているシンプルな内容
コンビニ弁当よりはマシだろう、と会計に出してみると

「190円です」

なんと、暗黙の半額設定(ブラインドハーフプライス)だ!
立て続けに行われた想定外の会計に、周囲の目が一蹴だけこの店に集中する
隣接店の半額弁当を手に取りかけた男が戻ってくる
また、流れに遅れたらしい息を切らせた女性が後ろから覗き込んで在庫を確認する

先に会計を済ませた男は、残る同類へ密かなエールを送りつつ、悠々とバスプールへ向けて戦場を後にした









すんませんごめんです
帰りのバスで思いついて勢いだけで書いた
今はちょっとだけ後悔している

先日読んだ今最もお腹がすく小説「ベン・トー」(電撃文庫から5巻まで絶賛発売中)をネタに即席で作りました
一応、各店舗名やら具体的な地名やらは伏せておきましたが、地元民にはバレバレっすね

SELVAが激戦区ってのは本当の話で、狭いフロアに首都圏にも名を連ねるような店から何から色々入ってますが、入れ替わりも激しく、某中華屋やら某シュークリーム屋やら某広島焼き屋やら、粘った挙句撤退しております

味も良く、値段も手ごろ、それだけでは生き残れないようですねぇ

中華屋のスタンプカード、もうちょいで肉まんセット貰えたのに!


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それじゃ、いただきます

  by varelire2 | 2010-03-16 22:26 | 社会・生活 | Comments(0)

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